プロがボーカルの悩みを解決します
Q37:バンドのデモテープ作成のため、自主制作でレコーディングを行っています。ボーカルをレコーディングする際、使用しているマイクは、AKG C3000Bです。録音にはMAC BOOKに付属しているgarage band3というソフトをインターフェイス(edirol UA-1ex)をはさんで使用しています。お聞きしたい事があるんですが、ヘッドフォンでボーカルの声をモニターすると、どうしてもボーカルの位置(鳴る場所)がCDのようにバックのバンドに馴染まず、少し浮き出たようなニュアンスになってしまいます。これは、マスタリングの段階で調整する事ができるものなのか、もしくは機材の問題なのか、教えていただけませんか?クオリティーの高いレコーディングスタジオで録音をする方が良いのでしょうか??やはり、プロのスタジオのように数百万というレベルの機材でなければ不可能なのでしょうか??近づける為に、マスタリングの際に工夫できるような点がありましたら、是非伝授いただければと思います。よろしくお願いいたします。(大学生・男・20)

こんにちは。
まずボーカルをオケになじまないということはミックスダウンの問題です。

ボーカルが浮き出た感じになるのは3つの原因があると思います。

一つはボーカルの音量です。ボーカルの音量がオケに比べて大きすぎればどうしても前に出た感じになります。
その場合は、ボーカルの音量を下げる(またはオケの音量を上げる)ことで解決できます。

二つ目はボーカルの音質です。
きれいに馴染ませるには、鳴っている音域を調節する必要があります。例えばオケがこもっていて(高音の抜けが悪い)、ボーカルの高音がよく出ていれば、どうしてもボーカルが目立ってしまいます。

その場合は、オケの高音域を調整してきれいに馴染むポイントを見つけるとよいでしょう。ただし、オケに馴染ませるためにボーカルの高音を削るなど極端な処理は避けたほうがよいでしょう。ボーカルの声質が変わってしまいますからね。オケの録音段階で、できるだけ抜けのいい音で録っておくようにしましょう。

三つ目は、前後の位置です。
ボーカルが手前にあれば、浮いた感じになるのは当然ですね。前後関係は、EQ処理でもできますが、リバーブやディレイなどの空間系のエフェクト処理によって行います。空間系エフェクターをかけることで、そのパートを後ろに下げることができます。

ただしこちらも掛け過ぎるとサウンド全体の抜けが悪くなりますから注意が必要です。

いずれにせよ、レコーディングの基本は、歌や楽器の音を原音に忠実に、周波数バランスが良く、太くて抜けのよい音で録音することです。後からの処理には限界があります。

そのあたりは、かなりの耳やテクニック・経験が必要ですから、色々研究してみるとよいです。(そのためにレコーディングエンジニアという職業があるのですからね。)
良い音で録音さえできれば、ミックスダウンやマスタリングでの調整はバランス以外はほとんどいらなくなるはずです。(後で調整すればいいだろう、という考えでは良いサウンドの作品にならない可能性が大きいものです)

自宅録音では、数百万円もする機材のあるプロスタジオ並の録音ができないか、ということですが、答えは「できないことはないが相当難しい」と言えるでしょう。

先に言いました原音に忠実で太くて抜けの良い音を録るには、やはり高級機材のほうがやりやすいのは事実です。しかし、いくら高い機材を使っても、使う人の耳やノウハウがなければ、いい音で録ることはできません。

最近は安価で優れたレコーディング機材やマイク、プリアンプなどがありますから、自宅録音でもやり方次第で、市販されているCDクオリティの作品を作ることは十分可能です。

コンデンサーマイクやハードディスクレコーディングの機材をお持ちのようですから、今の機材であっても、耳やテクニックを磨くことで、CDクオリティの作品を作ることはできるはずですよ!

次にマスタリングですが、この作業は基本的には複数の収録曲の音量や音質のバランスを取ることが目的で、この段階で音質を大きく変えることは好ましくありません。

またJ-POPなどのジャンルでは、トータルコンプ(全体を潰して)をかけて、音圧を出すという処理が行われます。これは商品の性質上やむをえず行うことであり、必要がなければなるべくやらないほうがいいでしょう。

市販CDのような音圧を出すのであれば、コンプレッサーやリミッターなどを使いますが、これも相当のノウハウがないと、ただ潰れて抜けの悪いサウンドになってしまいます。もしやるのであれば、マスタリングスタジオを利用したほうが間違いはないかもしれません。

自分でマスタリングをする際のコツとしては、これもやはり、ミックスダウンの段階でバランスの良いものを作っておくことです。周波数のバランスが取れていれば、音圧を出すこともやりやすいはずです。

最後に、デモテープであれば、そこまで音質にこだわる必要があるのか、ということも考えてみてください。音質を良くしたいという気持ちはよく分かりますが、そのことに時間を費やすより、演奏技術や良い楽曲を作ることに専念したほうが良いという考え方もあります。お金はかかりますが、プロのエンジニアの助けを借りることも正しいことです。メジャーデビューすれば、良い音で録音することはできますからね。

とはいえ、サウンドを研究してみることは、耳を鍛えることになりますから、ぜひ色々と試してみましょう。

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