プロがボーカルの悩みを解決します Q70:初めまして。こういう発声をしたいが、練習の仕方だったり、意識の仕方があってるかどうかわからないので質問をさせていただきます。黒人の声に憧れていて、ハスキーというか空気の量が多い声を出したいと考えてます。黒人の方は全体的に空気の量が多いと思います。日本人なら最近ではExileのAtsushiさん、吉田美和さん、AIさん・・・etc。韓国ではパク・ヒョシンさんという方など。多分、ほとんどの方がブラックミュージックに影響されたのかななどと勝手に思っています。 どういう意識と練習で空気の量が多い歌い方、発声ができるのでしょうか?よろしくお願いします。(学生・男・21)

こんにちは。
黒人のシンガーのような太く豊かな声で歌うことに憧れる人は多いと思います。空気の量は吸気と呼気で分けて考える必要があります。吸気とは吸い込む息、呼気は吐く息です。

おそらくご質問は呼気のことだと思いますが、歌の基本は呼気をできるだけ長く維持することです。吸気はできるだけ速くたくさん行い、呼気は反対にゆっくりスムーズに行うことで、安定した発声になります。

ブレッシーな声で歌うには、呼気の量のコントロールが必要です。黒人シンガーや優れたシンガーが長い時間ブレッシーな声で歌えるのは、吸気の量が多いのと呼気を自在に調節できているからです。どちらが欠けても上手く歌えないでしょう。

ブレッシーな声は呼気の量が多いので、空気を短時間でたくさん消費します。そのため、よほど吸気でたくさんの空気を取り込めないと、すぐに息が足りなくなってしまいますし、無駄に空気を消費していては長時間安定して声を出すことはできません。総合的な発声技術が求められるので、訓練を積んでいないと難易度が高い発声方法です。

吸気量を増やすには、腹式呼吸によって肺のスペースを限界まで広げなくてはなりません。腹式呼吸は横隔膜の上下による呼吸ですから、横隔膜を動かすための練習が必要です。呼気のコントロールには横隔膜の支えが必要です。横隔膜を支えることで空気の量を調整することができるのです。そのために腹筋などを効率よく使う必要があります。 いずれも正しいボイストレーニングが大事です。

ハスキーとブレッシーは厳密には異なります。ハスキーボイスは息漏れの声です。声帯は発声時には本来ピッタリ閉鎖しているはずですが、何らかの理由で隙間が生じ、空気が漏れているために掠れて聞こえるのです。これは声帯の形状によるもので、疲労や炎症などで声門閉鎖が十分にできなくなった場合も掠れ声になります。

黒人シンガーのように歌うには、息の量だけでなく、最大限に響かせた太くてパワフルな地声、音量のコントロール、多彩な表現力、力強いファルセット、ブルーノートを意識したピッチ・フレージング、魂のこもったフェイクなど、様々な要素を総合的にマスターする必要があります。もちろん黒人の歴史的背景、ゴスペル・ブルースから繋がるR&Bの歴史などの理解も欠かせないでしょう。

がんばってくださいね。

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