音楽ビジネスの仕組みが手に取るように分かる!

第1章 お客さんがCDの存在を知るまで


1-4 CDがお店に並ぶまで


Aさんは、テレビやラジオ、雑誌などのメディアでそのCDの存在を知り、実際にCDショップに足を運びました。そこで試聴機で聴いて、とても気に入ったので「ショップに並んでいるCDを手にし」、レジに向かいました。 」

いくら大きく宣伝して、たくさんの人にCDの存在を知ってもらっても、実際に「ショップに並んで」いなければ、買うことができません。

CDがショップにならぶまでにはどのような道のりを辿ってきたのでしょうか?

CDショップも儲けないといけない
CDに限らず、商品がお店に並ぶには、お店がその商品を「仕入れ」なければなりません。
お店はどうやって、「何をどれくらい仕入れるか」を決めるのでしょうか。

お店は商売でやっているわけですから、儲けなくてはいけません。

<儲けるための方法>
@できるだけ安く仕入れて、できるだけ高く売る。
Aたくさん仕入れて、できるだけ全部売り切る。

@ですが、CD(本や新聞も)に限っていえば、再販制度(再販売価格維持制度)という決まりがあります。難しそうな言葉ですが、簡単に言ってしまえば、「勝手に高くしたり安くしたりして売ることはできない」という決まりです。メーカーが決めた定価で売らないといけないことになっているんです。

そして仕入れの値段も定価のだいたい70%くらいと決められています。CDの定価の30%がお店の取り分というわけです。

このように、お店側が自由に「儲けの割合」を変えることはできないのです。定価1000円のCDを100円で仕入れて、2000円で売って1900円儲けるということはできないのですね。

そこでAですが、儲けの割合は決まっているので、あとはできるだけたくさんのCDを売るしかありません。

ところが、ただたくさん仕入ればいいというものでもありません。売れ残りができてしまうからです。

商品は、お金を払って仕入れると「在庫」になります。在庫というのは、借金と一緒です。売れない限りお店の損になってしまいます。(※実際には返品枠というのがあって、少しなら売れ残っても返品できることがあります。

逆に在庫を恐れて、少ししか仕入れないと、買いたいと思った人が買えなくなってしまうかもしれません。これでは儲けのチャンスをなくしてしまうことになります。

ですから、「売れ残らない程度になるべくたくさん仕入れる」というのがお店の腕の見せ所なのです。


さて、レコード会社はできるだけたくさんのCDを、ショップに仕入れてもらいたいと思っています。

そこでレコード会社の営業スタッフは、1枚でも多くのCDを仕入れてもらえるように、CDショップに売り込みをするのです。

CDショップにたくさん仕入れてもらうには
どうすればショップはたくさん仕入れてくれるのでしょうか?

その答えは、ショップに「そのCDがたくさん売れそうだと思ってもらう」です。

ではどうすれば、たくさん売れそうだと思ってくれるでしょうか。


売れそうか、売れなさそうか

ショップは、そのCDが売れそうか、売れなさそうかをどうやって判断するのでしょうか。

・前作がたくさん売れたから、次の作品もたくさん売れそう
・TVなどで宣伝をたくさんやって、評判になっているから売れそう
・新人だけど、ツアーをやってライブの動員も多いから売れそう
・有名なプロデューサーが手がけたから売れそう

などなど、判断の材料は様々です。

そこで、 レコード会社の営業スタッフは

「今度弊社でこんなCDを作りました!!このアーティストは、これまでにラジオでもバンバン流されていて、近くでやったライブでは○○人も入りました。すごく人気のあるアーティストです。前作は○○枚売れました。今回はもっと売れます!だから、ぜひ○○枚仕入れてください!」

とショップにお願いするわけです。

ショップの担当者が納得すれば、

「わかりました!では、○○枚いただきましょう!」

となるわけです。 交渉成立★万歳!


このような営業活動は「発売日の前」におこなわれます。発売日にCDが並んでないといけないのですから、当然ですね。

CD(特に流行もののJ−POP)は発売直後が命、つまり一番売れる時期なので、営業スタッフはできるだけたくさんのCDを仕入れてもらうように頑張ります。発売後も品切れがないように、営業スタッフはショップに足を運んで、常に確認をしたりもしますから気が抜けません。 営業スタッフのこうした努力によってCDがショップに並んでいるのです。ふぅ、大変ですねぇ。

どうやってお店まで届くの?
さて仕入れ枚数も決まりました。CDは一体どこからどうやって送られてくるのでしょう?

CDはレコード会社から直接送られてくる・・と思いきや、そういうわけではないのです。(※)

正解は、「卸業者(流通会社)」いわゆる「ディストリビューター」からトラックで運ばれてきます。

流通(ディストリビュート)とは、「分配する」といった意味があります。
レコード会社から全国のCDショップ1軒1軒に注文に応じてCDを送ってもいいのですが、これはとても大変な作業です。そこでこの作業を代わりに「ディストリビューター」がやってくれるわけです。

ショップからの注文枚数は「ディストリビューター」が取りまとめを行います。ここで全国のショップの初回注文枚数の合計が分かります。ディストリビューターはその注文枚数を、レコード会社から仕入れをするのです。そして仕入れたCDをトラックで各ショップまで届けます。

(※)インディーズなどで例外はあります。この過程を「流通(ディストリビュート)」といいます。流通というのは、CDにかかわらず、品物が全国のお店にいきわたるように、メーカーをお店の間を仲介することです。この場合で言うと、レコード会社とCDショップの間に入って仲介するのがディストリビューターです。
ディストリビューターは全国ほとんどのCDショップと契約をしています。
ディストリビューターも本店、支店と分かれていて、たとえば支店が福岡・大阪・名古屋・札幌にあるとしたら、そのネットワークで福岡・大阪・名古屋・札幌の各CDショップに届けられるのです。

音楽のダウンロード販売が主流になると、レコード会社とダウンロード配信業者が直接やりとりできるために、ディストリビューターの存在意義がなくなってしまいます。今、音楽業界は構造の転換期にいるわけですね。

まとめ

ではここまでの流れを図で確認しておきましょう。



流通のメリット?デメリット?
CDショップにCDが並ぶまでの流れは理解できましか?1枚のCDの売るために、ずいぶん色々な手間をかけているのですね。今までの説明は、みなさんがメジャーデビューしたときに契約する大きなレコード会社の例です。

こんなに大掛かりではなく、もう少し簡単に、個人レベルでできないのでしょうか?
ここで、一人で全ての作業をするのと、たくさんの人や会社が関わるのと、どのような違いがあるのか考えてみましょう。

 
メリット
デメリット
一人でがんばる ・自分の好きなタイミングで売ることができる(いつまでにCDを作らなければならないという期限がない)
・CDが売れたら売れただけ、売上が自分の手元に全て返ってくる
・自分の思うようなやり方で販売できる。など
・宣伝があまりできない
・限られたショップにしか置かれない
・売り上げが上がらない
・全て一人でやらなければならないので、音楽活動に専念することができないなど
会社とやる ・宣伝をたくさんしてもらえる
・全国のショップに置かれる
・売上が見込める
・音楽活動に専念ができる。
など
・多くの人が関わっているため、販売に至るまでに時間がかかる
・仲介をはさむので、それだけ手数料がひかれてしまう
・アーティストの取り分(割合)が少ない。
など


どちらにしても、メリットもありデメリットもあります。

こっちがいい!と一言で言うのは難しいのですが、自分がどういう立場でありたいか!を見直してみると、自分がどういう行動をとるべきか、見えてくるかもしれません。



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目次
はじめに
第1章 - お客さんがCDの存在を知るまで
1. CDを知ってもらう
2. メディアにのせる・記事・広告
3. 試聴機に入れてもらう・ライブ活動
4. CDがお店に並ぶまで・流通
第2章 - CDクレジットから業界を覗いてみよう
1. CDクレジットの説明
第3章 - CDが出来るまで
1. マスタリングとミックスダウン
2. レコーディング
3. アーティストの発掘
第4章 - 契約、そしてお金が動く
1. アーティストに関わる契約
2. アーティストが手にする収入
3. 新人と大物の収入

4. 著作権と音楽出版社


最後に

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