音楽ビジネスの仕組みが手に取るように分かる!

第3章 CDが出来るまで


3-1 マスタリングとミックスダウン

前のページで、音楽CDを販売する人たち、CDを作るために動いた人たちの姿を垣間見ることが出来たと思います。
では、そのCD円盤を作るまでにはどんな経緯をたどって来たのでしょう。

CDとはどんなもの?
CDとは「コンパクトディスク」のことで、それ自体はプラスチックの板です。盤面に凸凹を刻み、それをレーザー光線で読みとってデジタル信号に変換することで、CDプレイヤーで聴くことができるわけです。

みなさんが手にするCDというのは、レコーディング(正確にはマスタリング)したときに完成したマスターテープ(原盤)ではありません。レコーディングして出来上がったマスターテープを「複製」したCDを聴いているのです。

マスターテープについて説明しましょう。

マスターとは「元になるもの、基本となるもの」という意味です。マスターテープとは「CDを複製するための元になるテープ」のことです。マスターテープは、マスタリングという過程を経て作られます。テープといっても、カセットテープではなく、業務用のテープです。最近はCDの場合もあります。

マスターテープはこの世に一つしかありません。ですからレコード会社(原盤会社)にとっては、財産とも言うべきものなのです。レコード会社にとって、人気のある・よく売れるCDのマスターテープを持っているということは、その会社の強みになります。というのは、このマスターテープを制作し、所有している会社は「原盤権を持っている」ということだからです。原盤権を持っていれば、そのCDが売れるたびに「原盤印税」が入ってきます。印税については、第4章で詳しく説明します。

では次に、レコード会社の要とも言うべきマスターテープが出来るまでの工程をお話しましょう。

マスタリングって何?
マスターテープというのは、マスタリング過程を経て作られたテープのことですが、そもそもマスタリングとはどういう作業のことでしょうか?

■意外と気がつきにくい、曲間での演出

曲間とは、曲の終わりと次の曲が始まるまでの間のことです。普段あまり注意して聴かないかもしれませんね。
でも、 1曲聞き終わった後にすぐ次の曲が始まってしまうと、せわしなくなってしまいます。また、妙に間が空きすぎていたら、流れが止まってしまうかもしれません。

マスタリングでは、こうした曲の「間」の時間を調節して、CDを一枚通して聴いたときに、流れがあって聴きやすくなるように調整するのです。

気がつきにくいですが、これからCDを聞くときには、曲だけでなく曲間にも注目して聞いてみましょう。意外な発見があるかもしれません。

■音量、音質のバランスの調整

みなさんの聴くCD。アルバムを1枚通して聴いても、全体の音の大きさは、だいたい同じくらいになっていると思います。曲ごとに音量が違っていたら、曲ごとにラジカセのボリュームをいじらなくてはならなくなり、とても聴きづらいですよね。そこで、全体の音の大きさを整える作業をマスタリングで行うのです。

また、1曲めは低音が響いていて、2曲目は高音がキンキンしていて、3曲目は中音が出すぎ、、、、というのも、聴いていて気持ちよくありません。CD全体の音質を整えるのもマスタリングの作業です。

■曲順の決定

曲順を決めるのも、マスタリングで行います。CDには録音した順番に収録していくのではありません。アーティストやプロデューサーの意向にしたがって、飽きさせない作品にするために、慎重に曲順を決定します。ひとえに曲順といっても、そのCDの印象を変えてしまうので、色々試しながら最良の曲順を決めるのです。

■音圧を出す

音圧とは、簡単にいうと、音の迫力のことです。アマチュアのデモテープとプロのCDを聴き比べてみると、音の迫力がずいぶん違うことに気づきます。プロの場合は、マスタリングで音圧を上げるという作業を行っているからです。

これには理由があります。 少しでも音を大きくして、有線やラジオ、コンビニなどで流れた時に、耳に残るようにするためです。現在の音楽業界では、このマスタリングでむりやり音圧を上げる傾向があります。ただ、これには賛否両論あります。音圧を上げると、音質がレコーディングされた時と変わってしまうからです。

売るためには音圧を上げたいディレクターと、音の良さ・リアリティを求めるミュージシャンやサウンドプロデューサーとの間で、意見が食い違うことがあります。(どちらが正しいということではありません)

このようにマスタリングは、作品の質を決めてしまう大事な作業なのです。

ミックスダウンって何?
マスタリングの前には、ミックスダウンという作業を行います。ミックスダウンとは、楽器ごとにバラバラに録音したトラックの音量・音質バランスを取る作業です。

例えば、ミックスジュースを想像してみましょう。

一つ一つの果物、例えばりんご・バナナ・グレープフルーツ・・など様々な果物をミキサーで砕いて出来たものがミックスジュースですね。りんごの味を強くしたければ、少しりんごを多めに入れたり、グレープフルーツの酸味を利かせたければ、すこしグレープフルーツを多めにしたり、自分が飲みたいと思う味に近づけるには、その果物を多めにいれたり、あるいは少なめにいれたりといろんな加減が出来、その加減によって味も全く別物になります。

これら、一つ一つの果物を、「楽器のパート」と置き換えてみましょう。
通常CDのレコーディングをする時は楽器を一つ一つ別のトラックで録音します。スタジオにメンバーが全員集まって、せーの!で一気にステレオの2トラックに録音する場合もありますが、これだと後で調整ができなくなるので、普通はバラバラのトラックに録音します。これをマルチトラックレコーディング(多重録音)といいます。

バラバラに録音した沢山のトラックの音量や音質のバランスをとったり、エコーなどをかけて、最終的に2トラックにまとめる作業がミックスダウンです。



たとえば、
・ギターを少ーし大きめにしたい
・歌にエコーをかけたい
・ベースの低音をもっと出したい
・声を硬くしたい

など、アーティストやプロデューサーと相談しながら、細かくバランスを取っていきます。ミックスダウンする前には当然、元となる音を録音しなくてはなりません。
ミックスジュースも作る前には必ず必要な果物を買いに行かなくてはなりませんよね?



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目次
はじめに
第1章 - お客さんがCDの存在を知るまで
1. CDを知ってもらう
2. メディアにのせる・記事・広告
3. 試聴機に入れてもらう・ライブ活動
4. CDがお店に並ぶまで・流通
第2章 - CDクレジットから業界を覗いてみよう
1. CDクレジットの説明
第3章 - CDが出来るまで
1. マスタリングとミックスダウン
2. レコーディング
3. アーティストの発掘
第4章 - 契約、そしてお金が動く
1. アーティストに関わる契約
2. アーティストが手にする収入
3. 新人と大物の収入

4. 著作権と音楽出版社


最後に

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