新人アーティスト「MA」の場合
<設定>
@MARICOがボーカルをつとめるバンド「MA」のCDを、ニコニコミュージック(レコード会社)からリリースする。
AメンバーはMARICO・AKICO・RYOKO・ERIの4人(スマイルプロダクション所属)
BCDの中には10曲収録(全て5分以内の曲)
C作曲・作詞を全てMARICO担当。
Dこのバンドグループはデビューしたての新人で、イニシャル(初回出荷枚数)は3000枚
では、CD1枚の定価が3000円(税抜き)だとして、実際にシミュレーションしてみましょう。
@CDショップの取り分
CDショップいわゆる小売店の取り分は、定価の30%くらいです。
→3000×0.3=900円/1枚あたり
A容器代
容器代とは、プラスチックケースやジャケット、ブックレットなどの製作費です。これはだいたい定価の6.5〜15%くらいです。ここでは10%としましょう。
3000×0.1=300円/1枚あたり
この時点ですでに、定価の40%(1200円)が、引かれてしまいます。
B著作権使用料
レコード会社(ニコニコミュージック)がJASRACに支払う著作権使用料は定価の6%です。これは決まっています。
→3000×0.06=180円 がJASRACに その6%(180円)のうちのさらに6%(180×0.06=10.8円)がJASRACの元へ。
残りの94%が音楽出版社と作曲者、作詞者に渡されます。
180−10.8=169.2円/1枚あたり
を音楽出版社、作曲者と作詞者で分けます。
取り分は、新人の場合だと、音楽出版社(50%)、作曲者(25%)、作詞者(25%) が一般的です。
169.2÷2=84.6円 →音楽出版社へ
84.6÷2=42.3円 →作曲者・作詞者へ
今回、MARICOが全部の作詞・作曲を担当していて、3000枚プレスしているということなので、
3000×84.6=253800円
これがMARICOさんの銀行口座に振り込まれます。
なお、CDの人気が出て、この初回プレスに加えて、2000枚追加プレスされるとします。そうすると、
2000×84.6=169200円
が、更にMARICOさんの銀行口座に振り込まれます。
※実際には、(契約形態にもよりますが)印税はいったん所属事務所のスマイルプロダクションに振り込まれ、そこから手数料を引かれてMARICOさんの銀行口座に振り込まれます。
C原盤印税
原盤印税とは、CDの中身の音楽、つまりマスターテープを作った原盤制作者(レコード会社や原盤制作会社)に支払われる印税です。この場合はニコニコミュージックというレコード会社に支払われます。契約内容にもよりますが、大体10%くらいです。
3000×0.1=300円
これが、原盤印税として、原盤制作者(この場合はニコニコミュージック)に支払われます。
初回出荷枚数が3000枚なので、
3000枚×300円=900000円
が原盤制作者(この場合はニコニコミュージック)の口座に振り込まれます。
もし、原盤制作費が150万円かかっていたら、60万円もの赤字になってしまいますね。
実際には90万円ではレコーディングをするのは、なかなか難しいです。150万円かけてしまったら、利益をだすために、最低5000枚は売らないといけないのです。
Dアーティスト印税
アーティスト印税(歌唱印税)とは、アーティスト(バンドメンバー)が演奏を録音したことに対して、支払われるものです。容器代を抜いた金額の中の1〜3%が相場ですが、この「MA」というバンドはまだ新人なので、1%とします。
CD定価からジャケ代抜いた金額
3000−300=2700円
2700×0.01=27円 →アーティスト印税の総額
メンバーの「MARICO・AKICO・RYOKO・ERI」の4人に平等に分配すると、27.6÷4=6.9円
初回で3000枚プレスしているので、MARICO・AKICO・RYOKO・ERIにそれぞれ
3000×6.9=20700円
が銀行口座に振り込まれます。
※実際には、(契約形態にもよりますが)印税はいったん所属事務所のスマイルプロダクションに振り込まれ、そこから手数料を引かれてMARICO・AKICO・RYOKO・ERIにそれぞれの銀行口座に振り込まれます。
E残りはどこへ?
ここまでで、57%が使われており、残りの43%はすべてレコード会社にいきます。
この場合はニコニコミュージックというレコード会社にその43%がいきます。
3000×0.43=1290円
これがすべてレコード会社の儲けになるわけではありません。この中から宣伝費や営業費、流通代、管理費(家賃やスタッフの人件費)などを引いて、残りがレコード会社の儲け(利益)になります。利益がどれくらいになるのかは、宣伝にどれだけお金をかけるか、スタッフが何人くらいいるかで変わってくるわけですね。
宣伝しなければ、CDは売れないし、宣伝しすぎてもCDがそれほど売れないと、利益はなくなってしまいますから、難しいところです。
まとめ
なにやら難しくなってきましたが、ここで、メンバーがもらえるお金を整理してみましょう。
MARICO・・・作詞作曲・歌を担当しているので、著作権印税 253800円+アーティスト印税20700円=274500円
AKICO・RYOKO・ERI・・・各パートの演奏のみなので、アーティスト印税20700円のみ。
こうみると、楽曲を作って演奏した人と、演奏だけした人と金額に差がありますね。3000枚でこれですから、もし100万枚も売れてしまうと、メンバー間の収入格差がとても大きくなってしまいます。
バンドの解散などは、結構こうしたことが理由の場合が多かったりします。
では、大物アーティストの場合をみてみましょう。
大物アーティスト「Eさん」の場合
@Eさん名義のCDを制作する。
AEさんはシンガーソングライターとして一人で活躍。演奏は外部ミュージシャンで補う。
BCDの中には10曲収録(全て5分以内の曲)
C作曲はEさんが5曲、外部の作曲家が5曲、作詞は全て外部の作詞家に依頼
DEさんはこれまでの実績もあり、売上が見込めるのでイニシャル(初回出荷枚数)は20万枚
@CDショップの取り分
→3000×0.3=900円/1枚あたり
A容器代
3000×0.1=300円/1枚あたり
B著作権使用料
→3000×0.06=180円 がJASRACに。JASRACの取り分はさらにこの6%(10.8円)
残りの
180−10.8=169.2円
を音楽出版社と作曲者、作詞者で分けます。
169.2÷2=84.6円ずつ・・が音楽出版社と作曲者、作詞者に渡される。
作曲と作詞でまず50%ずつ分けます。
84.6÷2=42.3円
全部の作詞をしている外部の作詞家は、42.3円全てもらえます。
作曲については、外部の作曲家とEさん自分自身で半分づつ分担しているので
42.3÷2=21.15円外部の作曲家・・21.15円
Eさん自分自身・・21.15円
今回20万枚プレスしているので、これら金額にそれぞれ20万をかけてみましょう。
21.15×200000=4230000円
が、Eさんと外部の作曲家の銀行口座それぞれに振り込まれます。
外部の作詞家は
42.3×200000=8460000
が、銀行口座に振り込まれます。
C原盤印税
前回同様10%で計算します。
3000×0.1=300円
初回出荷枚数が20万枚なので、
20万枚×300円=6000万円
が原盤制作者の口座に振り込まれます。
原盤制作費を2000万円くらいで抑えておけば、4000万円の儲けになりますね。これはすごい。
Dアーティスト印税
Eさんは大ベテランなので3%もらえるとします。
CD定価からジャケ代抜いた金額
3000−300=2700円
アーティスト印税は
2700×0.03=81円
81×20万枚=1620万円
E残り
残りの41%はレコード会社の取り分です。
3000×0.41=1230円
20万枚×1230=2億4600万円
シミュレーション、いかがでしたか?
売れれば大きな収入になり、売れないとほとんどお金にならない、ということをイメージしていただけたでしょうか?
次に著作権についてもう少し詳しく説明しましょう。
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目次 はじめに |
第1章 - お客さんがCDの存在を知るまで 1. CDを知ってもらう 2. メディアにのせる・記事・広告 3. 試聴機に入れてもらう・ライブ活動 4. CDがお店に並ぶまで・流通 |
第2章 - CDクレジットから業界を覗いてみよう 1. CDクレジットの説明 |
第3章 - CDが出来るまで 1. マスタリングとミックスダウン 2. レコーディング 3. アーティストの発掘 |
第4章 - 契約、そしてお金が動く 1. アーティストに関わる契約 2. アーティストが手にする収入 3. 新人と大物の収入 4. 著作権と音楽出版社 最後に |