あいうえ音楽理論 for ボーカル

5.音程

次に、単音ではなく、2つ以上の音が重なってくる場合についてご説明します。

違う高さの音が2つ以上あるとき、そこには必ず音程というものが生まれてきます。単位は「」を使います。

ちなみに、音が2つ以上あるとき、時間差があるか、同時であるかで、音楽的な意味が変わってきます。

下の譜面を見て下さい。
Aのように時間差がある場合、メロディ(旋律)になり、Bのように同時になる、時間差がない場合は、ハーモニー(和音)になります。

どちらも音程という意味では一緒です。メロディーもハーモニーも音楽の基本となる部分だから、音程についてしっかり勉強しておきましょう。

では度数についてご説明いたしましょう。

下の譜例をみてください。(ここではわかりやすく、ドから数えています)



Aのように、2つの音が同じ音でも「1度」という音程があります。
Bは「ド・レ」で2度、Fは「ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ」で6度、と数えていきますです。「0度」というのはありません。

ちなみに、A〜Hつまり、1度から8度以内(オクターブ)の音程を「単音程」と言います。

音程は9度以降も存在します。9度以降を「複音程」と呼びます。
9度以降になると、間が広がってくるので、「1オクターブと○度」というように、1オクターブを基準にしてしまう場合が多いです。もちろん1オクターブのみならず、2オクターブでも3オクターブでも、当然音程は存在します。

度数の数え方は理解できましたでしょうか?
しかし、ここで終わってはいけません。音程にも種類があり、それぞれ響きも変わってきます。

どのような種類があって、どのように分類されるか、ここで紹介します。

音の分類

次の表を見てください。

C・・・・一番調和する・安定している
D・・・・Cの次に調和するが、少し不安定  
B・・・・調和せず、不安定

調和とは、2音を同時に弾いたとき、きれいに聞こえるか、濁った感じで聞こえるかという違いと考えてもらえばいいでしょう。

ですが、人によってきれいかそうでないか、聞こえ方が違うという意見もあると思います。
ここでの「きれい」というのは、人がそれぞれ感じる気持ちの「きれい」というより、物理的なものだと考えて下さい。

Cの完全音程の(1.4.5.8)度は、周波数の比率が単純なのです。
周波数の比率が単純なほど、濁りの少ない響きになります。

例えば、ドとソの関係で説明すると、ソの周波数はドの1.5倍です。
つまり、完全5度は2:3の周波数比を持っているのです。

Bの不協和音程は比率が複雑になっていて、振動数が単純であればあるほど、お互いの音がよく響いて調和しているということなのです。

例えば増4度という音程は、32:45という複雑な周波数比率なので、とても濁った感じに聞こえます。

Bの音程は「調和しない・不安定」ということで、印象を悪く持ってしまう人もいるかもしれませんが、決して「使ってはいけない」というわけではなく、むしろ使い方によってはより効果的な響きが生まれることもあります。

ボーカルをやっている人で「音程が悪い」という人がいます。ご説明した通り、音程とは2つの音の差、距離を言います。正しい音が取れない人は「ピッチ」が悪いと言いますが、音程が悪いという言い方も定着してしまっています。

音程の種類

音程には5種類あります。

1・4・5・8度:完全音程(パーフェクト音程)
2・3・6・7度:長音程(メジャー音程)・短音程(マイナー音程)
完全・長音程を半音上げる:増音程(オーギュメント音程)
完全・短音程を半音下げる:減音程(ディミニッシュ音程)



※1・4・5・8度は長・短音程にはなりません。また2・3・6・7度は完全音程にはなりません。

下の譜例を見てください。ドから数えた音程(1度から8度)です。どのような雰囲気かをつかんでみましょう。そしてぜひ一度鍵盤を鳴らしてみてでも、響きを確認してみることをお勧めします。





 









   


この譜例は、左側から右側にすすむにつれて広い音程になっています。
フラットが2つくっついている記号(減6度・減7度など)は「ダブルフラット」といって、全音下げてしまう記号です。←こういうマークです。
ダブルシャープ←こういうマークもあります。ダブルフラットと逆で、全音あげるという意味です。

音程の数え方
下の鍵盤の図を見て下さい。
これはある音(この場合はド)を基準にして半音ずつ数えたときの数字を表したものです。
例えば、「レ」なら「半音2つ分」、「ソ#」なら、「半音8つ分」ということです。



実際にその音はどういう音程になるか、確認してみましょう。

 
完全音程系
短音程系
長音程系
増音程系
減音程系
0:同音
完全1度
減2度
短2度
増1度
長2度
減3度
短3度
増2度
長3度
減4度
完全4度
増3度
増4度
減5度
完全5度
減6度
短6度
増5度
長6度
減7度
10
短7度
 
増6度
11
長7度
減8度
12
完全8度
増7度


音程を正確に判別できるまでは、この表で確認しながらチャレンジしてみましょう。


方法@:表と鍵盤を使う場合

@まず楽譜に書かれてある2つの音を見る。



A度数を数える。この場合は「@ド」「Aレ」「Bミ」「Cファ」なので4度になる。

B 2音間の半音の数を数える。



C表で数えた数に当てはまるところをみる。これは半音6個なので「6」のところをみると、どうやら可能性は増4度か減5度らしいぞ。
さっき認識した数「4度」を思い出し、「あぁこれは増4度なんだな」としみじみ思う。

方法A:自力で考える

表も何も自分の力しか信じない、というあなたはこちらをお勧めします。

@まず楽譜に書かれてある2つの音を見る。



A記号がついている場合は、全て取り外す。



Bはずした状態で、何度あるかをまず数え、この時点で「○度になる」という認識を持つ。
この場合「@ファ、Aソ、Bラ、C、Dド、Eレ、Fミ」で7度。

Cその○のなかの数字が、長・短か完全かどちらに当てはまるかを考える。
( この場合この場合7度なので、当てはまるとしたら長・短です)

増や減がついたときと違って、この場合は純粋に7度だと認識できるので、あとは長か短かを考える。この場合は♭がついているので、短であることがわかります。

よって、この音程は「短7度」です。
        
最初はこの鍵盤と表を見ながら、頭の中で鍵盤を描けるまでに慣れたら、もう大丈夫です。 そして大切なのは、実際の音程を響きで確認することです。どんな音か知っておくと、後々にもとても役に立ちます。

この2つの音を鳴らしたときの感じをつかんでおくことも大切ですね。
例えば「暗い感じだな〜」とか「明るい感じだな」とか自分の感じるままでよいので、聞いた感じの雰囲気を覚えておきましょう。

ボーカリストにとって、音程をしっかり把握することは、ピッチを良くするために大切です。メロディー(連続した音程)を理解しておかないと、脳が声帯に正しい指令を送ることができませんからね。

また人によって得意な音程・苦手な音程があります。メロディーは異なる音程の連続です。いつも同じ場所でピッチがずれるという人は、メロディーを分析してみましょう。きっと苦手な音程の動きの傾向が分かるはずです。

例えば、完全5度の動きは得意だけど、4度や8度の動きは苦手・・・と言った具合です。その音程を重点的に練習すれば、ピッチの精度は上がりますよ。


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