あいうえ音楽理論 for ボーカル

6.調(キー)と音階(スケール)

調(キー)とは

さて、次は調についてです。
調のことを「キー」とも言います。ポップスの世界でよく「キーは何?」というのは、 「調は何?」という意味なのですね。

カラオケに行かれる人なら「キー変更」という機能があるのを見たことがあると思います。キーを上下させると、音の高さは変わりますが、曲自体は変わりませんよね?

調(キー)とは何でしょうか。

音にはそれぞれグループがあります。
この説明をかねて、あるキャンプ場を覗いてみましょう。



音符たちは、みんなで「音符学院強化合宿」というキャンプに来ています。
おやおや、みんなそれぞれグループに分かれています。
なんだかちょっと怖そうな先生がいますね。

 

それぞれのグループに分かれて、テントの中にはいれ〜!








どうやらこの1つ1つのテントの中には、それぞれ7つの音符が入っているようです。
さて、それぞれどんな仕事をしているのでしょうか。 こっそりお話を聞いてみましょう。

このグループはどういう決まりで分けられているんだい?


「グループは、「気の合う者どうし」で分けられているんだ。」



気の合う者ってどういう意味だい?


「人間と同じように音にも気が合う、合わないがあるんだ。
気の合う者どうしで音楽を作ると、とても落ち着くというか、ほっとする雰囲気になるんだよ。」



そのグループが「調(キー)」というわけだね。


「そうさ。特にこの「明るい系」はメジャーキー(長調)という調の集まりなんだ。」


つまり、例えば、Gメジャーというキーの曲は、Gのテントの中の音を使って出来ているということかい?


「その通りさ。それから、僕ら一人一人は別のテントを掛け持ちしてるんだ。よく見てもらえれば分かると思うけど、僕(ド)は「C、G、F、Bb、Eb、Ab、Db」のキーにいるだろう?僕はこれらのキーの連中と相性が合うんだ。 」

なるほど〜。曲は同じテントの音しか使っちゃいけないのかい?


「そんなことないよ。同じテントの音を使えば、安心感のある音楽になるってこと。もしちょっと違和感とか緊張感を出したければ、他のテントから呼んできてもいいんだよ。」

いわゆる「転調」というやつだね。
でもあんまり気の合わない奴を入れすぎると、すごくギスギスした雰囲気になるから注意が必要だよね。ほどほどに、が大事だね。
ところで、♯系と♭系の最後の、「F#」と「Gb」って同じ音なんじゃないの?


「そうさ!あのテントは実は同じ奴が入ってるんだ。
異名同音の意味はわかるか?」



うんうん。みんなは覚えているかな?♯や♭のつけ方で、音の読み方は違うけど、同じ音になることを「異名同音 (いめいどうおん)」というんだったよね。


「F#」と「Gb」のテントをもう一度よく見てごらん。
中にいる音を1つ1つをじっくり見てみると、名前は違うけどみんな同じ音なんだよ。作曲者の気分でどっちのキーを使ってもいいんだよ。
ただ楽器によって、「♯系」が得意な楽器と「♭系」が得意な楽器があるから、演奏させる楽器に合わせてキーを決めるといいよ。」


うんうん。ギターなんかは♯系が得意だし、管楽器は♭系が得意だよね。
この「明るい系キャンプチーム」というのは一体なんのこと?


「もうひとつ「切ない系キャンプチーム」ってのもあるのさ。「明るい系キャンプチーム」というのは表向きの名前で、本当は「メジャーキー(長調)」という名前なんだ。切ない系は「マイナーキー(短調)」という名前なんだ。
おっともうそろそろ行かねば。じゃあまたな。 」


なるほど、次は「切な系キャンプチーム」を覗いてみよう。
ありがとう。がんばってね!



今度は切ない系の訓練だ〜!
さっきと同じ様にグループ別に分かれろー。







この「切ない系キャンプチーム」も1つの小屋に7つの音符が入っているみたいだ。
だけど、明る系キャンプチームとどんな違いがあるんだろう?
また、誰かに聞いてみよう。

ちょっと、キミ!明る系と切な系はどういう風に違うの?


「ん?僕を呼んだかな?
明るい系(メジャーキー)とは、その字のごとく「明るい感じ」の曲を作るときに使うんだ。逆に「切ない系」(マイナーキー)は「切ない感じ・時には悲しい感じ」の曲を作るときに使うんだ。曲を作るときに自分で「どういう曲にするか」によって使い分けるんだよ。」


よくみると、例えば「♯=2」の旗が立っている「D major」「B minor」、小屋の中の音は一緒だけど、なにか関係はあるのかい?


「よく見てごらん。「D Major」「B minor」って♯♭の数が同じだろう?
「明るい系」と「切ない系」、種類は違うけど、♯♭の数が同じテント同士は、実に仲がいい。親戚同士みたいなんだ。」


なるほど。そうなんだ。キー同志それぞれに関係があるんだね。どうもありがとう〜



「またな〜」



調の大まかなイメージはついたでしょうか?
では実際に音楽に置き換えてみるとどうなるのでしょうか?今から説明しますね。


下の譜例をみてください。

          

このように、ト音記号・ヘ音記号のとなりに♯・♭をかいてキー(調)を表します。

譜面Aのように「♯が3つ」ついていたら、「明るい系」(メジャーキー)のA Major、「切ない系」(マイナーキー)のF♯ minorということになります。

このように書くと「ファ・ド・ソ」の音に♯をつけなさい、ってことなんですね。
譜面Bのほうは「B♭ Major」「G minor」ということです。

これら調号をみるときは、「どの音に記号がついているか」というところに注目しましょう。

この調号をつけるときの順番、覚えていますか?

そう、♯系は、「ファドソレラミシ」
♭系のほうはシミラレソドでしたね。

調について大体のイメージをもっていただいたと思いますが、少し具体的に「調同士の関係」とはどんなものなのでしょうか?
訓練中の音符さんたちが言ってた「親戚同士のような関係」とは、どの調とどの調なんでしょうか?
それぞれの関係に名称もありますので、知識として読んでいただけるとありがたいです。

親戚関係なのは・・・・
まず、同じ数の記号の旗を持っている小屋同士のです。
たとえば「F Major」と「D minor」、この2つは「♭1つ」という共通の旗を持っていましたね。音符さんに聞いたところ、この関係のことを「平行調」というんだそうです。

そして、アルファベット文字が同じ小屋同士です。
たとえば「C Major」と「C minor」 、この2つは「major」と「minor」と違っていますが、アルファベットが同じですね。
この関係のことを「同主調」というそうです。

とりあえず、主要な関係は全部で4つあります。
残り2つは、「スケール」の授業のときにご紹介します。


音階(スケール)とは

調の次は、「音階」です。
音階とは一体なんでしょう?

音階=スケールと言います。音階は「音の階段」を略した言葉だと考えてください。

まずは、この絵を見てください。階段の上に行くにしたがって、音は高くなっていきます。



ここで、「音の階段」=「音階」を譜面で表してみます
今は 「イメージ」をつかめればOKです。


音階というのは、調(キー)の中の音を8度(1オクターブ)内で階段状に並べたもの
なのです。

さきほど、テントの中の音、つまり調(キー)を勉強しましたね。テントの中の音を低いほうから順番に並べて見やすくしたものが、スケールなのです。

音階は、これまでの音楽の長い歴史の中で、それぞれの時代・場所でたくさんの種類が生まれています。とっても面白いですね。

スケールの基本用語


ここでは、ポップス音楽をやる時に必要なスケール「メジャースケール」を紹介します。



この用語だけは覚えておいてください。

T・・・・トニック(T)
W・・・・サブドミナント(S)
X・・・・ドミナント(D)

(Z・・・・リーディングトーン)


先ほどの階段をつかってみましょう。



階段には高さが2種類あります。
(ミ・ファ)と(シ・ド)の間だけ短くなっているのは気がつきましたか?
この短くなっている間はつまり、「半音」ということですね。

ここで覚えておいてほしいのは、
メジャースケールは常に、第3音と第4音、第7音と第8音の間が半音に、それ以外は全音になっている
ということです。

スケールは大きく分けて「メジャースケール」「マイナースケール」の2種類あります。
これは先ほど学んだメジャーキー、マイナーキーの音を階段状に並べたものがスケールなのです。

それから、スケールが始まるのは「ド」以外の音から始まる場合もあります。
でも、「メジャースケール」と分類されるものは、階段の形、つまり

第3音と第4音、第7音と第8音の間が半音に、それ以外は全音


という法則は全部一緒なのです。

この法則になっていれば、どの音から始まってもメジャースケールになります。
ですから、先ほどの階段の絵の「ドレミ」の文字をかえればいいだけです。

ためしに、メジャースケールの階段の上に、ドレミファソラシドを「ラ」から並べてみましょう。



あれ?これだと「シ→ド」が全音になってないし、「ド→レ」も半音になっていませんね。
それから、「ミ→ファ」 「ソ→ラ」は全音になってしまっています。

階段に合うように音を少し変えてみましょう。



これで、正しいメジャースケールの階段になりました。
「ドとファとソ」に♯がついているということは、Aメジャーキーの音だということが分かりましたか?

つまり、この「ラ」の階段はAメジャーキーの音を階段状に並べた「Aメジャースケール」ということになります。

次に、音の役割について説明します。

スケール内の音の役割

スケール上の音には、それぞれ役割があります。

音の役割とは、「それぞれの音が意味を持っている」、ということです。
例えば、「I」の音は、そのキーの中心となる音で、その音が鳴ると落ち着いた感じがします。つまりそのキーの親分というわけです。

特に、「I・IV・V」は重要な役割を持っています。

名称は
T・・・・トニック(T)
W・・・・サブドミナント(S)
X・・・・ドミナント(D)

といいます。

トニックとは、「主音」ともいい、そのキーの親分(主)となる音です。
ドミナントは「属音」といい、1番弟子みたいなもので、
サブドミナントは「下属音」といい、2番弟子のようなものですね。

この3つの音が、曲の骨組みになります。
それから、「VII」はリーディングトーン(導音)といって、これも大事な音です。

この辺は、コードとかコード進行について勉強するともっとよく分かるようになりますので、
今は名前だけ覚えておきましょう。

マイナースケールとは

では今度はマイナーキーの音を階段にしたスケール、マイナースケールついて説明しましょう。

調のところで説明しましたが、メジャーとマイナーキーは調号の数が同じ、親戚のような関係にあるキーがあるというのは覚えていますか?

例えば、CメジャーとAマイナー(#も♭なし)、GメジャーとEマイナー(ともに#1つ)のような関係ですね。

ここでは、Cメジャーの親戚の「Aマイナー」で説明しましょう。



メジャースケールの階段と比べてみましょう。

先ほどはV・W間が半音だったのに、今度は全音になっていますね。
その代わりにU・Vが半音になっています。
それから、VII・I間は全音になっています。
でもV・VI間が半音になっています。

つまり、マイナースケールは、
第2音と第3音、第5音と第6音の間が半音、残りが全音
という階段のスケールなのです。

ここで音程の復習です。

ラ〜ド(I〜III)の音程は何度ですか?

はい、そうです。短3度ですね。

では、メジャースケールのドーミ(I〜III)の音程は?

長3度ですね。

つまり、メジャースケール・マイナースケールの大きな違いはこのVの音にあるのです。

IIIが長3度だと明るい感じ、短3度だと暗い感じ。
これはコードを勉強するときにも大事なことだから、覚えておいてくださいね。


さて、このマイナースケールには仲間がいるんです。

もう一度、メジャースケールとマイナースケールの階段を見比べてみよう。
特に「VII→I」をよく見て下さい。

メジャースケールは半音でマイナースケールは全音になっていることに注目して下さい。

この「VII」の音というのは、「リーディングトーン(導音)」という役割があって、「VII→I」は半音になっていたほうが、スムーズに聞こえます。

ですが、このマイナースケールは「VII→I」が「全音」になっているので、いまいち音階の流れがスムーズではないのです。

そこで、この「VII→I」を「半音」に変化させたスケールがあります。



これでマイナースケールにリーディングトーンを作ることができました。

このVIIを変化させてマイナースケールを
ハーモニックマイナースケール(和声的短音階)」といいます。

ちなみに変化させる前のマイナースケールを
ナチュラルマイナースケール(自然的短音階)」といいます。

でも、これだと「VI→VII」が1音半に広くなってバランスが悪くなっています。
スケールというのは基本的には「全音」と「半音」の組み合わせだから、あまり美しいスケールとは言えません。

そこで、すべてを「半音と全音」に するために、もう少しいじってみましょう。



ファに#をつけてみました。これですべて「半音と全音」になりましたね。
このマイナースケールを「メロディックマイナースケール(旋律的短音階)」といいます。

このように、マイナースケールには3種類あるのです。
覚えておいてくださいね。
じゃあ最後にスケールをまとめておきましょう。

スケール名
音の間隔
メジャースケール
(長音階)
全―全―半―全―全―全―半
マイナースケール
(短音階)
ナチュラルマイナースケール
(自然的短音階)
全―半―全―全―半―全―全
ハーモニックマイナースケール
(和声的短音階)
全―半―全―全―半―全音半―半
メロディックマイナースケール
(旋律的短音階)
全―半―全―全―全―全―半


同主調・平行調以外の残り二つはズバリ!「下属調」と「属調」といいます。
「サブドミナント」「ドミナント」という単語が出てきましたね。覚えていますか?

サブドミナント(W)の音から始まるスケールを持つ調を「下属調」といいます。
そしてドミナント(X)の音から始まるスケールを持つ調を「属調」といいます。

つまり調の関係を同主調・平行調・下属調・属調の4つまとめて、親戚のように仲のよい「近親調」といいます。



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