レコーディングには大きく分けて3つの作業があります。
1.録音→2.ミックスダウン→3.マスタリング
1.録音
何はともあれまずは録音です。
録音方法には、2種類あります。一斉に演奏して、2トラックにまとめて録音してしまう方法と、演奏パートを各トラックにバラバラに録音して後でまとめる方法です。
前者は「一発録り」といい、2chのステレオトラックに録音してしまいますから、後で各パートの修正や調整はできません。録音前のセッティングですべてが決まってしまいますから、事前調整を慎重に行う必要があります。そのかわり、作業時間は短くて済みますし、多重録音の録音機材(マルチトラックレコーダー)も必要ありませんから、予算的にも安く済みます。
後者はいわゆる「多重録音」で、各パートをバラバラのトラックに録音しますから、後で細かく修正や編集、調整が可能です。ドラムパートなどでは、ドラムパーツそれぞれにマイクを一本ずつ立てて、別のトラックに録音することが一般的です。後で楽器やコーラスパートなどを重ねたりできますから、幅広いアレンジが可能です。しかしマルチトラックレコーダーはトラック数が増えるにしたがって高額になりますから、スタジオ代も高くなってしまいますし、録音・編集・バランス調整作業も、一発録音とは比較にならないほど時間がかかります。
販売用のCDの場合は、通常は多重録音をすることが多いので、少人数のバンド編成で多重録音をする場合の流れについてご説明します。
バンド編成ですと、まずはカラオケ(バックトラックやオケとも言います)から録音して完成させます。
ドラム→ベース→ギター→キーボードの順で録音していくことが一般的ですが、ノリや一体感を出すために、できれば一斉に演奏するほうがいいでしょう。
最初にドラムトラックを完成させます。ドラムだけだと、どこを演奏しているのか分からなくなりますし、気持ちも込められないので、他のパートも一緒に演奏することが多いです。ガイドにするための仮演奏なので、音質は関係ありませんから、ブースの数に余裕のない場合は、コントロールルーム(ミキサーのある部屋)でギター・ベース・ボーカルなどが一緒に演奏しても問題はありません。あくまでガイドが目的なので、特にボーカルはあまり思いっきり歌って喉を疲れさせないようにしましょう。
ドラムは楽器の数も多いので、セッティングやサウンドチェックにとても時間がかかりますから、余裕を持たせたスケジュールを立てるとよいでしょう。ドラムパーツそれぞれにマイクを立て、さらに空気感を出すために離れたところにマイクを立てたりします。
楽器やアンプなどにぴったりマイクをつけることを「オンマイク」、離してマイクを立てることを「オフマイク」といいます。
オンマイクは空気感はありませんが、楽器の出音を忠実に録音できます。オフマイクはマイクと出音の間に空間がありますから、その空気感まで録音することができます。オンマイクだけだと前に出たサウンドになりますが、奥行きがなくなりますし、オフマイクだけだと引っ込んだ感じになってしまいますから、両方を同時に録音してうまくバランスを取り、前に出ていて、なおかつ奥行きのあるサウンドを作ることが多いですね。(もちろん目指すサウンドによります)
ドラムトラックが完成したら、エンジニアさんに簡単にバランスを取ってもらい、ベース・ギター・キーボードなどを重ねていきます。そしてカラオケが完成したら、最後にボーカルの録音です。
2.ミックスダウン
すべてのパートの録音が終わったら、バラバラのトラックを2chのステレオトラックにまとめる作業です。ミックスダウン、またはトラックダウンといいます。
ここで個々のパートの音質を調整し、音量のバランスを取ります。
最初は、ある程度エンジニアさんにお任せして、イメージに合わせて音作り、バランス取りをしてもらいます。ラフミックスが完成したら、メンバーやプロデューサー・ディレクターが聴いて、微調整していきます。
アマチュアの場合は、バンドのメンバーそれぞれが自分の音を大きくしたい、音質を自分の好みにしたいと言い出すと、なかなか作業が進まないことがあります。
全体を客観的に見ることが出来るプロデューサー的な立場の人間がいると作業がスムーズに進みます。
納得の行くバランスになったらミックスダウンは終了です。
通常ミックスダウンは1曲ずつ完成させていくので、できあがった曲は全体の音量や音質に差が出てしまいます。
そこでアルバム全体の音量・音質のバランスを取ります。そして曲順通りに並べて、マスターテープを作る作業をマスタリングと言います。
マスタリングはレコーディングスタジオでも可能ですが、プロの場合は、専用の機材が揃ったマスタリングスタジオで行います。ミックスダウンが個々の歌・楽器のバランスや音質を作っていくのに対し、マスタリングはアルバム全体のバランスを取っていくわけです。リスナーの耳に届くのは、この時点で最終調整したサウンドなので、最新の注意を払って作業をしていきます。
最近はコンピューター(PC)に取り込んで行うことが多くなりました。ミックスダウンした音源をPCに取り込み、曲順通りに並べて、イメージするサウンドを作っていきます。すでに2ミックスに落とされた状態なので、個々の楽器パートの音量や音質を変えることはできません。
マスタリングはレコーディングとは違った技術・ノウハウが必要なので、マスタリングエンジニアという専門のエンジニアもいるくらいです。
ポップスやロックなどは、前に出た迫力のあるサウンドが欲しいときには、コンプレッサーなどの機材を使って、迫力を出します。アマチュアのデモテープとプロのCDを聞き比べてみると、迫力が全然違うことに気づくはずです。
コンプレッサーとは、音を潰すためのエフェクターです。
ミックスダウンしたものを、ただ音量を上げると、特定の音域だけが出すぎて、ピーク(限界)を超えて歪んでしまうことがあります。特定の出すぎた音を潰すことで、全体の音量感、音圧感を上げるわけですね。
2ミックス全体にコンプレッサーをかけるので、トータルコンプと言ったりします。
トータルコンプは音圧を出すのに有効ですが、ただやみくもにかけてしまうと、音が痩せて細くなったり、元の音質が変わってしまうことがあります。
出来るだけ元の音質を変えずに、適切な量をかけて最大限の音圧をかせぐことが必要なので、特別なノウハウが必要です。エンジニアさんにお任せするといいですね。
Jポップなどを見ていますと、いかに音圧を稼ぐかという音圧競争になっている部分があります。これには理由がありまして、コンビニのBGMやラジオで曲がかかったときに、少しでも音量を大きくして、インパクトを与えたいという制作サイドの狙いがあるようです。当然音質を犠牲にしているわけで、良い音の作品にしたいミュージシャンとインパクト重視の制作者サイドのせめぎ合いがあったりします。
このあたりは洋楽の作品のほうが、良い音で迫力を出すことに成功していることが多いように感じます。
こうした作業を経て、晴れてマスターテープの完成です。あとは、CDプレス工場でマスターを複製し、ジャケットやブックレットをつけて、CDの完成です。
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